おバ歌謡の価値

 「なんでお前はバカゲーだのおバ歌謡だの、そんなのばかり注目するんだ」と言われた。その人曰く、「結局売れてないんだし、隠れた名作というわけでもないんだろ?」というのである。
 フゥ、ヤレヤレ! である。
 創作を志す者が、もっとも畏れるのが「バカ」だ。理由は簡単、絶対に敵わないからだ。売れる、売れないの問題ではない。ナンバーワンよりオンリーワン、とよくいわれるが、「バカ」は常にオンリーワンである。
 子門真人の『スターウォーズ』は、『トリビアの泉』でも取り上げられたから知っている人も多いだろう。想像して欲しい。今の日本において、スターウォーズであんな歌を作れる人がいるだろうか? まさにオンリーワンである。
 バカの大半は偶然の産物である。意図してできるものではない。ところが、まれに意図的にバカを生み出すことのできる人がいる。それこそが「天才」であり、具体的にいうなら、「おバ歌謡の神」なかにし礼なのである。なかにし礼先生が偉大な作家であり、作詞家であることは説明するまでもない。しかしそれは、先生がコンスタントに生産している「バカ」の一部が「これまでにない傑作」として脚光を浴びたからだ。もし先生が、バカでも何でもない、ありきたりの詞ばかり書いていたら、それは決して脚光を浴びることはなかっただろう。
 「創作する」とは「バカになる」ことなのである。合掌。