es

 木曜洋画劇場で『es』を観る。『監獄実験』と呼ばれる実話を元にした映画で、被験者を看守と囚人に分け、監獄そのものに作られた実験場で二週間生活してもらう、というもの。話を聞くだけで、ある程度結末は想像できるだろうが、要するにタガが外れてすごいことになってしまうわけである。
 しかし、ここで大事なのは、事前に『暴力は禁止』といった禁止事項が提示されていることである。それでも、それを越えてしまう。最優先事項である「監獄の秩序を保つ」という目的を大義名分に、看守たちはあらゆることを自分に都合良く解釈するようになっていく。
 すげえコワイ。でも、理解できる。自分の『役割』と、それにまつわる『大義名分』の恐ろしさは、色んなところで目にすることができる。連合赤軍事件や、地下鉄サリン事件なんて、その典型だ。この監獄実験によって、これらの事件が“異常な人”によってではなく、“異常な環境”によって引き起こされる、ということが証明された、といえる。
 油断してはいけない。“異常な環境”は、すぐ傍にある。例えば、閉ざされた家庭の奥では、「しつけ」を大義名分にした「幼児虐待」が起こっているのだ。
 そしてもう一つ恐ろしいことに、現実に行われた『監獄実験』の公式ホームページがある!
http://www.prisonexp.org/ (いいのかおい? DVDとか売ってるぞ?)
 検索したら、実験の要約を見つけた。http://debaser.cocolog-nifty.com/88c/cat34610/ これを見ると、囚人・看守ともに、視野狭窄ともいえる状態に陥ったことが分かる。特に囚人側が、これが実験であることさえ忘れるほどに囚人化しているのが興味深い。「お前は囚人なんだ」ということを認識させるために行われた様々な行為が、「囚人役」ではなく「囚人」としてのアイデンティティを生み出したわけだ。
 江戸時代の武士の“切腹”や大戦時の“特攻隊”なんて、やれと言われて簡単にできるものじゃない、と現代の俺たちは想像する。でも……意外と、できるのかもしれない。そういう環境に置かれたら、「そういうもんか」と受け入れてしまうのかもしれない。
 うーん……もっと詳しく知りたいのだが……監獄実験の研究本とかないのかなあ。