13ウォーリアーズ

 深夜にやっていたので観る。いやあ、佳作だ! すばらしい! ……と思ってネットで検索してみると、意外に評価が低い。まあ、だから深夜に放送されるんだけど(笑)。
 たとえて言うなら、『ロード オブ ザ リング』はFFである。すっげえ強い主人公がズバズバ敵を倒して、世界の滅亡を防ぐ。それに対して、『13ウォーリアーズ』はTRPGの世界だ。武骨な戦士たちが協力して、ちっぽけな村を守るために戦い、敵陣に潜入し、暗殺する。スケールがめちゃくちゃ小さい。でも、これもまた本当のファンタジーだ。いや、この作品自体は10世紀という設定なので、ファンタジーじゃないんだけどね。
 ストーリーは簡単で、主人公のアラブ人がカリフの怒りを買って北欧に左遷されたところ、北方民族間の争いに巻き込まれて戦うことになる、というものだ。このアラブ人は頭が良く、周りの会話を聞いているだけで北方の言葉を覚えてしまう。逆に北方の蛮族たちは、文字を持たない未開の人々である。
 『ロード オブ ザ リング』を観て、「こいつらどうやって生活してるの?」と思った人はいないだろうか? 畑とか牧場とか鍛冶屋とか、そういう日常の部分がかなり切り捨てられている。そのくせお城はすげえ立派で、誰が建てたんだとか思ってしまう。その代わりに、『ロード オブ ザ リング』はテーマが明確で、物語が熱い。
 『13ウォーリアーズ』にはテーマなんてない。ただ、生き残るために戦わなきゃならなかった時代の日常が描かれているだけだ。だから、主人公たちはヒーローではない。歴史には絶対に残らない。そんな中で、毒に冒されて余命わずかになったリーダーが、「もし文字を使って自分たちの行いを書き残すことができたら」と呟くのが、実に胸を打つ。もしこの作品にテーマがあるとしたら、多分これなんだと思う。