描きたいもの

 よくマンガの新人賞などで、編集者のコメントに「描きたいものは何なのかはっきりさせろ」と書かれている。ずっと、どういうことなんだろう? と悩んでいた。
 例えば、エロ漫画は明確である。「俺は幼女が好きなんだー!」(←犯罪)というようなリビドーのもと、幼い女の子をあんなしたりこんなしたりしちゃうわけだ。そういう人はエロ漫画を描いていればいい。一般の漫画では、例えば『エマ』なんかは「メイドさんが好きなのよー!」という作者の声が聞こえてくる。だから森先生はメイドさんの漫画を描いているわけだ。
 でも、上記の例は「モノ」に対する情熱である。バイクが好きだからバイク漫画、バスケが好きだからバスケ漫画。その流れで言うなら、俺はファミコンが大好きだからファミコン漫画だろうか(笑)。多分、無理。
 「モノ」に依存しない情熱を持つ漫画家といえば、島本 和彦先生などが代表だろう。文句なしに、訴えかけるものがある。これこそ、本当の意味での「描きたいもの」なんだと思う。
 まあ、そんなことを考えながらズルズルと二年間も(!)無職を続けているわけだが、ようやく何か見えてきたような気がする。それが『かなえの中学生日記』である。これを描いているとき、頭の中は真っ白だ。自分が全て、原稿用紙に吸い取られてしまうような感覚がある。「感情移入」とか「入れ込む」とか、言葉にしてしまうとつまらないのだけど、描いている本人は執筆中別世界にトリップしている。いやマジで。
 今日アップした第八話P8は、この作品で一番描きたかったページだ。ここまで描いてきた65ページ(合ってる?)は、全てこの1ページのためにあったと言っても過言じゃない。実際に描いてみると、まだちょっと甘いんだけど。果たして、読者の方々に何か、伝わっているだろうか?